薬膳とは

中医学の基本

薬膳を考えるときに、中国伝統医薬学(以下、中医学と略)を基本とするため、ここで、中医学の基本をお話しします。
ただ、とても難しい内容になるため、できるだけ簡単にお話しします。

中医学は、自然と一体であります。
人は昔、五感を頼りに自然界を生きていました。太陽・月・星の動きや変化の規則性を観察して、年・月・日、暦、季節を作りました。
季節は24つに分かれ、24節季を作りました。
中医学は、中国の古代哲学から生まれてきた医学であり、宇宙観が含まれます。

陰陽学説

光と陰、表面と裏…。自然界のすべてに相互作用と対立。
陰陽は、対立する両面を持ちながら統一され、常に動きながらバランスを保っています。
一日の中でも朝から昼は“陽”、夕方から夜は“陰”になります。

陽は太陽、陰は月のイメージです。
一年通すと、

赤色の“陽”は、春分から出始め、夏至でピークに達します。
夏至を過ぎると低下していき、秋分で“陰”と逆転します。
青色“陰”は、秋分から出始めて、冬至でピークに達します。
そこから低下していき、春分で“陽”と逆転します。
これが、1年を通しての、陽と陰の流れになります。

五行学説

五行とは、木・火・土・金・水の5つの物質を指します。
五行学説とは、この5つの物質の概念・特性・規律・相互関係を研究し、五行の運動と変化によって、自然界と人体のすべての事物を説明しようとする学説です。これを医学で身体の生理・病理・診断・治療を説明し、中医学の基本的な考えとなりました。

~木<春>~

木…成長、発散、柔軟、伸びるという働きがあり、自然界の中で、この特徴に当てはまるものは、木になる。

<疏泄を司る>

①精神、情緒を安定を維持する。
②気、血の流れを正常に保ち、水の代謝を順調に行う。
③消化と吸収を促す。
④女性の排卵・月経、男性の射精を正常に保つ働き。

<蔵血を司る>

血液を貯蔵する働きと血量を調節します。
春の季節にのぼせやめまい、イライラなのどが起こりやすいのは、木の働きの発散、上昇により、気、血が上昇しやすくなるために、起こりやすいということです。

~火<夏>~

火は、熱い・炎上・明快。
季節は夏。五臓は、“心”。
心は、喜ぶことを好み、温かいことを好みます。
夏の時期にテンションが上がったりするのはこの時期の特徴とも言えます。

心というと、西洋で心臓に当たります。
心臓の一番大事な機能、全身の血液を巡らせる。ポンプです。
心臓が止まると死にます。
五臓の心は、同じことになります。

<血脈を司る>

血脈とは、
①血を作る
②血流、脈管の動きをコントロールします。
中医学の血は、まず生命活動を維持する赤色の液体と言います。
食べ物に含まれる栄養が“気”と交わり、心の働きによって作られます。これが血です。
作られた血は、心の働きによって全身に運ばれていきます。

<神志を司る>

これは、2つの意味があります。
①生命活動。
顔色、視線、言語、反応、姿勢、動きなど体表に現れることです。
②精神、意識、思想活動です。
眠れなかったり、精神不安になるのは、心の働きが良くないからともされています。
精神的に安定な時の仕事と、ストレスがかかった時にする仕事では、疲労度も違いますよね。
血の巡りにも関係しているので、巡りが悪くなると瘀血(おけつ)という状態を引き起こしやすくなります。

4大特徴と言われる症状が、

①出血 生理不順などの不正出血、血尿・血便・吐血 など
②刺痛 針で刺すような痛み、痛みが限定で触ると痛みが増すが、温めると楽になる。
③紫紺 顔色が黒かったり、爪が青白い、あざ、舌表面が黒点のような斑点がある。
④固まり 生理出血のような固まりなど。
特に、女性でよく起こりやすくなり、心の働きの低下が原因になります。

~土<梅雨>~

五行の土は、植物・農作物・動物などの全ての生命が誕生し、育ち、生活する基盤。
雨が降るので、湿気りがあるので、農作物がよく育つ。
季節は、梅雨。五臓は“脾”。

食べ物を摂取した後、消化吸収して、水穀精微(飲食物を消化吸収し作られた栄養物質)に変換し身体に栄養を与えて、成長させると言われています。
さらに脾は胃にも繋がってきます。

脾と胃は身体の中心部にあるので、中焦とも言われます。
身体の栄養物質を作り、生命活動を維持しているので、別名〜後天の本〜とも言われています。

①栄養から、気・血・精・津液(体内の水分)を作り出します。

その後全身に運ばれます。美肌、筋肉の成長にも関わるのでとても大事な五臓です。
よく胃の調子が悪いと、肌の調子がよくないと言われるます。

②統血(とうけつ)を司る

統これはコントロールと言う意味があるので、血が血管外に溢れ出る事を防ぎます。
脾・胃の働きが低下する事で、栄養が全身に行き渡らなくなります。
身体の不調が起こりやすくなります。

~金<秋>~

金は、硬い性質を持つが、変化する柔軟性があり、また独特で綺麗な光沢をもち、清粛、収斂。季節は、秋。空は澄み、乾燥した西風が吹いて作物など黄金色に輝き、収穫する。
季節は、秋。五臓は“肺”。

5つの中で最もデリケートで、清潔な物を好むので、汚れた空気に傷つきやすい臓です。
この時期に喘息が起こりやすいのは、寒暖差が激しくなり、冷たい空気が肺に炎症をきたしやすくなるので起こりやすくなります。
このように、“肺”は乾燥を嫌い、潤ってる状態が一番いいです。

<呼吸と気を司る>

五臓の肺は、体内の濁気を吐き出し、自然の綺麗な清気を吸入して身体の気体の交換を行い、“宗気”を作り出します。
作られた宗気は、心と肺の働きで全身に巡ります。
この働きにより、呼吸を正常に保ち、気の出入りや血流を調節し、五臓の気の流れを正常に保つ事で、生命活動を働かせ、維持します。

<肺の宣発(せんぱつ)と粛降(しゅくこう)>

宣発は、栄養物質を全身に巡らせて、身体を守ります。
粛降は、新鮮な空気を取り込んで宗気を作り、全身に巡らせ、また呼吸器官の老廃物を取り除きます。
水の流れにも関わり、臓器を潤しながら水を腎に運び、尿を作って出す働きを司ります。

~水<冬>~

水は命を潤すもっとも重要なもの。冷たく、高いところから低い所に流れていく。相対的に静止状態となる。
季節は、冬。五臓は“腎”。

全身の水分を管理し、尿を作り出します。
五臓の腎は、腎臓+副腎です。


腎は、両親から遺伝により受け継ぐものを貯蔵しています。

脾は、“後天の本”と言うと書きましたが、腎は“先天の本”と言われます。
これは副腎が、ホルモンを分泌するからです。
全身のエネルギーの源として、気力・精力を起こし、身体を強壮します。
脳、性機能、呼吸、水分代謝です。
〜女性は7の倍数、男性は8の倍数で身体に変化をきたす〜
女性は14歳で、男性は16歳で性機能が発達して成熟していきます。その後、女性は35歳、男性は40歳で老化が始まるとされています。
この考えをさらに細かく見ていくと、骨・歯・脳に繋がってきます。
精から髄が生成され、骨が作られ、歯が養います。
脳の働きを司り、思考能力、精神意識、情緒活動、記憶をに関係します。

<納気を司る>

身体の濁気を吐き出すのは“肺”の力で行い、吸う力は、“腎”の力で行います。
この2つの臓で全身の気の巡りを順調に行います。

気とは

「気 」 とは、自然界を構成するもっとも原始的な物質で、“ 気 ” の運動変化により自然界の全てのものが誕生し、存在するものと考えていました。
私たち人類は、自然界の中の一つの生物で、生命活動に “ 気 ” が重要な機能を果たしているという概念があります。

日常の食べ物を “ 穀気 ” 、栄養を “ 水穀精気 ” 、体を守る “ 正気 ” 、精微物質を “ 精気 ” 、水液代謝の異常を “ 水気 ” 、疾病の素因を “ 邪気 ” など全てに “ 気 ” が関わっている事が分かると思います。
その “ 気 ” には大きく分けて4つあります。

1、元気

中医学の定義は “ 生命活動の原動力 ” です。
腎、脾の話で、生まれた時の精気は “ 腎 ” から生成し、その後補うには、“ 脾 ” が関わると言いました。気がすべてなくなることそれは “ 死 ” です。

2、宗気

水穀精微と新鮮な空気が合わさって生成される。

3、衛気 4、営気

水穀精微の中に、活力があるもので、体の温めて病気を守る気 “ 衛気 ”
それ以外で、血液の一部になるのが “ 営気 ” です。

・気の作用は、6つ。

1、促進作用

気は活力が強いものなので、身体の発育・成長、臓器や組織の働きの元になるための作用です。

2、温煦作用

気は、パワーなので、身体を温める作用をもちます。この働きで臓器や組織の機能を正常に保ちます。

3、防衛作用

身体の表面の邪気の侵入を防ぎ、病気から身体を守ります。

4、固摂作用

内臓の位置を固定させる働きがあります。
この作用で、津液・血・精、つば・汗・尿などの液体の管理をします。

5、気化作用

食べ物と、新鮮な空気を水穀精微に変えて、精・気・血・津液を作り出します。

6、栄養作用

営気は、臓腑や組織を潤したり、熱を冷ましたり、体温をコントロールすることで臓器を養う作用をいいます。

血(けつ)とは

血は、生命活動を維持する血脈に流れる赤色の液体のことです。
血は腎精から作られ、精血同源ともいわれます。
水穀精微や、津液からも生成されます。

血の作用は、2つ。

1、補養作用

水穀精微から生成された血は、栄養が多く含まれているため、血が臓器や組織に栄養を供給してくれます。

2、養神作用

血により、精神を安定させます。血が豊富だと同時に気も多くなるため(=気血同源)精神が安定し、充実します。意識や頭の回転も速くなり、動作がスムーズになります。

津液(しんえき)とは

津液は、人体の正常な水液の総称で、体液・分泌物を指します。
津液は様々なところで生み出されます。
また、血が津液に変化することもできるのです。(=津血同源)

津液の作用は、4つ。

1、滋養作用

皮膚・毛髪・臓腑を潤します。

2、潤滑・保護の作用

関節・目・鼻・耳・咽頭を滑らかにし、乾燥などから守る作用です。

3、補充作用

骨髄・脊髄・脳・関節に津液を補充し、血液の一部になります。

4、排泄作用

尿・便・汗と一緒に代謝で出た不要なものを排泄します。